出会い 16





ノリコはまわりを見渡した

並んで立つノリコとイザークの前に
木の演台をはさんでジェイダが立っていた

会場は綺麗に飾り付けられていたが
中心に置いてある演台以外には何もない
出席者達は各々が好きな所に立って見ている
大抵は二人の顔が見られる所にいた

ここで立会人のもと、二人は夫婦の誓いをする

それが終われば場所を変えて祝宴となる予定だった




ノリコをイザークへ渡す役を終えた功が
千津美と寄り添って立っているのが見える

偶然の出会いが、二人をこの世界に招いてしまった
少し悩んでいたみたいだったけれど
功は帰る事にしたようだ
でもここに来た事で、 何かが少し変わっていくのだろう

二人が出会ったのは、千津美がまだ15、功が17の時だと聞いた
それから静かに揺るぎなく愛を育んできたんだ
お互いを理解し尊敬し合っている
あの二人もいずれこうして結婚するのだろうな
それは間違いないことに思える


イザークは17の時にガーヤおばさんに出会った

「ガーヤに出会わなければ
 おれは剣など触りもしなかった…」
いつかイザークがそう言っていた

「そうしたら、おれは今頃何をしていたんだろう」


一つの出会いが、未来を少しずつ変えていく…




そして、あたしは17の時…
この人に出会った


隣に立つイザークを見上げる


いきなり知らない世界に飛ばされて
恐ろしかったけれど

あたしはこの人に出会えて
救われたんだ…


ううん、違う


そうじゃない


あたしはこの人に出会うためにここへ来たんだ


今はもうそれが確信できる


イザーク…


彼と出会ってからの出来事が
一つ一つ思い出されていく

いいことばかりではなかった
悲しかった事も
辛かった事も
恐ろしかった事もあった…

けれど

彼がそこにいてくれた
それだけで充分だった



取り囲んでいる人達を見る

ここにいる皆とは
イザークとあたしが出会った事で、知り合っていった

ひとつの出会いが別の出会いを呼ぶ
その度に、未来が…運命が少しずつ変えられていく


いい出会いばかりではなかった

ステニーの町のあの兄弟…
思い出してくすっと笑う

けれど彼らのおかげでクレアジータさんと出会えた

クレアジータさんはあたし達に
光の翼の正体を
必死で探し求めていた運命を変える道を
教えてくれた

ラチェフ、ケイモス…
本当に恐ろしかった
今でも思い出すたび震えてくる

でも…
ずっと苦しめられてきた運命から
イザークが解き放たれたのは
彼らとの戦いを通してだったんだ

あの人たちと戦うことがなければ
イザークは光の力を見つけることが
出来なかったかもしれない




ひとつひとつの出会いを積み重ね
あたし達は一緒に歩いて来た
そして今ここに…
あたしはこうしてイザークの隣に立っている


ノリコはこの世界で出会った全ての人に感謝をしたかった



お父さん
お母さん
お兄ちゃん
おじいちゃん


今あたしはイザークの妻となります

ここに皆がいてくれないのは寂しいけれど
でも…絶対幸せになれると
約束できる…





「では、誓いの口づけを…」

夫婦となる宣誓をした後
ジェイダが言った



イザークがノリコのヴェールに手をかける


『イザーク』

ノリコは彼の心に語りかけた


『どうした、ノリコ』


『あたし…イザークと出会えて…』




『よかったぁ』


ヴェールの下に、 ノリコの最高の笑顔を見つけて
イザークは彼女を抱き寄せ口づけた





「お…おい」

「あちゃー」

「うわっ…」


仲間たちは一様に慌てた


「よせ…イザーク、今は…」

「後でいくらでも時間があるだろ…」



千津美と功は、赤くなって下を向いている


ジェイダ左大公も、目のやり場に困っていた



「誓いの口づけ」は
形式的に唇を合わせるものなのだが…


二人の口づけは終わらない…






やっと唇を離したけれど
ひしと抱き合ったままの二人を前に

ジェイダが夫婦の宣言をした






おわり


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