出会い その後 15




「ち…千津美、ちょっと…」
女の子たちからおいでと、呼ばれた

「なあに」

「ねぇ…イザークさんたら、なんでわかるの?」

「えっ」

「携帯も持っていないのに
 典子さんが渋滞に巻き込まれてるの知ってたし
 さっきだって…迎えに行ってたでしょ、典子さんのこと」

「タイミング、ばっちしだったよね…」

「そ…それは…」

千津美は困った
嘘をつくのは得意じゃない
ノリコたちの話を姉にした時も
電話だったから助かったのだけど…


「心が…心が通じ合ってるから…あの二人」
つい言ってしまった


「まあ!」

みんな、ぽぉっと赤くなった

「素敵…なんて素敵なの…」


「?」


「究極の愛よねぇ」

なんだか考えはどこかに飛んでいってしまってる




「なるほど」
感心したように小室が言った

ノリコが現れてから、イザークの表情が一変した
見ているほうが恥ずかしくなるような甘い視線をノリコに投げる
そこまで惚れられるってのはある意味羨ましいが…

おれだって…

藤臣の横に座って、ニコニコしている志野原を見た
あいつら、とうとう…
結婚したんだ…あたりまえだろ、そんなの…

ちくっと胸が痛んだ







「どこも、いっぱいだなぁ〜」
「どいつを退かせようか」

一見スマートな印象の若者の集団だが
暴力性をもっては、暴力団のそれとも劣らない
近頃この界隈で幅を利かせているグループが
やってきた

彼らにとって場所取りなど必要ない
欲しいところにいつでも座れる


「うん?」
妙に女の子たちの視線が集中している所があった


男が…4人、女の子は5・6人か…
ちょうど正面にいる男の顔が見えた
けっ、いやになるくらいのいい男だ
となりの女にやけにでれでれしているが

「あそこにしようぜ…」

ニヤッと笑って、リーダーが言った



「おまえらっ、そこをどけっ」
突然現れたそいつらに、周りのものは青くなって
早々にお開きにして逃げ出す集団もいた


「ん」
豪法寺が振り返って

「せっかくいい気持ちで飲んでるのによぉ
 なんだてめぇーらは」
と言った


小室はちらりと見ると
「おれは、パス」
就職したばっかだしよ…


功は黙って睨みつけた


以外と迫力のある面々に、少し引いたが
簡単には引き下がれない
面子ってのもある


「痛い目に遭いたくなかったら、とっととその場所譲れ!」

と凄んでみせた


「そこは、おれたちの場所だぜ…女どもは残ってもらうがな」




「ゆずれ だと…」


イザークが立ち上がった


「おまえら ばしょ・・・?」



そいつらに向かう

「な…なんだよ、一番生っちれぇのがでてきたぜ」



「おれ ばしょとり ひるから…」




「けっっ、場所取りしてくれたってか
 おれたちのためによ〜」

「ぱしりかい…あんた、こいつらの」

「じゃまだから、どけっ」


払いのけようとした手をがしっと掴む

「じゃま どっちだ」

その手を軽くひねるとそいつは地面に叩き付けられた

「こ…こいつ」

全員がイザークに向かおうとする



「イザーク」

功が立ち上がる

「だめだ、あんたは」

そう言うと前へ出た


「な…なんだ、今度はおめぇが相手する気か…」


功はポケットから手帳を取り出すと
そいつらの目の前につきつけた

「警視庁XX署所属だ」


「これ以上騒ぐと迷惑行為で、署に来てもらうぞ」


「うっ」

一瞬ひるんだが

「かまわねえ、こっちは大人数だ。やっちまえ」




「警察に協力したってなら、多少暴れてもお咎め無しか…」
楽しそうに笑って、豪法寺が立ち上がった

「ちっ、しょーがねぇな」
小室もしぶしぶ立ち上がる


3人並ぶとすごい迫力だ


完全にそいつらの腰が引けた時に

「おまわりさーん、こっちですよ」

と言う声が聞こえた



「おぼえてやがれ」


負け台詞を残して逃げて行った



「まずいな・・」

本当に警察が関わると全員事情徴収される
功はイザークの心配をした




「安心しろ、功 」




「おまえたちが花見してるというから来てみたんだが」

うまそうにビールを飲みながら章が言う

「なんだか楽しい展開になってたな」


「ったく、おまえらに喧嘩売るなんて…」

どんだけまぬけなんだ、と笑った



せっかく…
昼からの鬱憤をはらせるかと思ったのだが

イザークは面白くない



「イザーク」
ノリコが恐る恐る言った

「なんだ」

「も…もしかして、場所取りさせちゃったこと怒ってる?」

「いや…」

「じゃあ、なんで目そらしてるの」



「怒ってはいない」
ノリコを見て言った

「おまえがそうしてほしいのなら、何度でもする」

そもそもやっても構わんと言ったのはおれだ

だが…


「おまえに置いていかれて、一人にさせられて…」

機嫌良くしているのは無理だろ…


ノリコは青くなった


口を開こうとすると

「ごめんなさい…か」

先に言われてしまった


上目遣いにそぉーっとイザークの顔を伺う



真顔だったイザークが、急にくっと笑った



「あっっ、イザーク」

も…もしかして、新しいバージョンで遊んでる?


「半日一人でいたんだ」
少しくらいかまわんだろ…とノリコを抱き寄せた




周りはもう慣れてきたのか
自然に目をそらし、宴は続いた












本当は警察官採用後数ヶ月間は警察学校で寮生活らしいです
千津美が可哀想なので、目をつぶって下さい









   
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