出会い その後 8




その日、イザークは休みを取って
朝から、日本へ行く準備をしていた




けれど、突然アレフがやってくる


「頼む、イザーク」


「今日は、おれは…」


と言うイザークの肩をポンと叩いた




ジェイダの妻であるニアナの父親は、一昔前の政府の高官であったが
子どもたちはそれぞれ家庭を持ち
妻に死なれ
引退して、故郷の村に戻っていた

その彼が病に倒れ、明日とも知れぬ命であると
先ほど知らせが入った

彼の村まで、馬を走らせても3日はかかる


「シンクロしてニアナ様とグローシア様を連れていってくれ
 そうしてすぐに帰ってくれば、そう時間はかからん」




断れるすべはなく、イザークは二人を連れて
その村へとシンクロした



彼女らをそこへ連れて行って
帰ろうとしたところ


「大変だー」
と知らせが入った


村道の一部が崖崩れをおこし
運悪くそこにいたひと家族が生き埋めになっているという


「子どももいる…はやくしないと、死んでしまう」


男手が欲しいんだ、と




ニアナとグローシアが、黙ってイザークを見た

イザークは、はぁっとため息をついた


彼はその場に駆けつけると
土砂や岩塊を片っ端からはねのけ
親子を救った

父親は、少し傷ついているようだったが
母親や子どもたちは無事だった

是非お礼をと、感謝する村長をニアナたちに預け
イザークはノリコのもとへ戻った




戻ってきたイザークの姿を見て、ノリコは

「とにかく、洗ってきて」

と言った



イザークの髪も身体も泥だらけだった


お湯を沸かしている暇はないので
冷たい水できれいにしてきたイザークが
寝室へ戻ると

ノリコがイザークの衣装選びに夢中だった

あたしの実家で着替えている時間もないし
うん、これがいい

黒のハイネックのシャツと黒のズボン

鳶色の上着を、前を閉めずに羽織れば

何気にかっこいい




満足したノリコが
イザークににこっと笑いかける


そんなノリコをイザークはたまらずに抱きしめて…










だめだな…おれは

やっとノリコから身体を離したイザークは
彼女の横にごろんと横たわった


ノリコは、まだ恥ずかしがってその身体は固いけれど
イザークに求められるまま応じる

今は余韻を感じながら、彼の傍らで目を閉じている



それまでだってノリコが欲しくなかったわけではない

けれど

その身体がこの腕の中にいるだけで
その唇を重ねられるだけで

満足していた


それなのに…

結婚式の夜、初めてノリコを抱いてから


彼女を欲しいと思う気持ちを抑えられない

昼も夜も構わず、彼女をベッドへと引きずり込んでしまう


彼女を二週間も家族のもとへ置いておくなどと
よく考えられたものだと
今さらながら思う


一度など、仕事から戻ったとき
夕食の用意をしているノリコの姿にたまらなくなり…


気がつくと
下に皆が集まっていた


ノリコは恥ずかしがっていたので
一人で下へ降りていく



その夜、集まった皆は
だれもいない台所に

「またけんかしたのか…」


「でも、料理は終わってるよな…」


「お姉ちゃんたち、上にいるよ」


ジーナの一言に
「か…帰ったほうがいいのかな」

控えめなアゴルが赤くなって聞いたが



「ま、いいんじゃないかい」

ひゃひゃッと笑って

ガーヤが皿の用意をし
食卓に料理をのせた




皆で勝手に食べていると
イザークが一人で降りてきた



「先にいただいてるよ」

というガーヤに、勝手にしろと答える


「あんまり、ノリコに無理させるなよ」


とバラゴが笑って、イザークから刺すような視線を浴びせられる





いったいおれはどうしたのだろうか

押さえきれない衝動に戸惑うイザークであった







「うん…」
と、うっとりとノリコが目をあけた


そして、はっとすると



「あーーーーっっ、イザークったら!」

がばっと、起き上がる




「もう、完璧に遅刻だよ…」




慌てて服を着て、樹海へと急いだ




時差は5・6時間程度 あの世でお昼は、日本の夕方です    
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