出会い その後 9




仲人役はまだ来なかったが
もう初めていいだろう…と、飲み物や食事が運ばれてきた


章が挨拶をする

「本日はお集りいただき、ありがとうございます

 我が愚弟の功が、めでたく嫁を迎えることができて
 兄としても感に堪えません」


「ちぃちゃん」
と千津美を見て

「こんな無愛想で口べたな不器用なやつを
 今まで面倒みてくれてありがとう
 そしてこれからも宜しく」

千津美が赤くなってうつむいた

「功の兄として、ちぃちゃんに感謝したいことはいっぱいあるんだけど
 取り敢えず今は…」

二人の将来を祝して乾杯となった



千津美の姉は、あの日のことを思い出していた


これから こいつの心配は
おれがするから 安心してくれ


彼は決してそれを安易に口にしたのではなかったと
今あらためて思う

あの言葉通り千津美を今までずっと護ってくれた
そしてこれからも…


「おかあさん、悲しいの?」
涙を子どもに見られてしまった

「違うの、嬉しいのよ…」




「仲人来ないわね…」

真由美の友人がつぶやいたのを聞いて


「年齢的には、このカップルと同じご夫婦でね」
「なんでもすごく遠くに住んでいるですって
 電話も携帯も通じない僻地だって」

千津美の友人たちが、聞きかじった知識を披露する



「やだーっ、なにそれ」

ブランドものやショッピングが何よりも好きな彼女には
そんな生活は信じられない


「旦那さんは、外国の人だって」
「すっごく仲が良くって
 この二人彼らに影響されて結婚したらしいわよ」


自分と同年齢の女の子が
いくら彼のことが好きだからと言って
何もない所で暮らしているのかと思うと
同情をおぼえてしまう




それにしても…
長髪でクールなタイプが好きな彼女は

小室さんにしても、隣にいる豪法寺さんっていったかしら
ときめいてしまう

話しかけるのはこわいけど…


さっき挨拶した新郎のお兄さんなんか
めちゃくちゃ美形で
ついうっとりとみつめてしまう


けれど…圧巻はやっぱり

新郎を見る

無表情ですごみがあって
長髪ではないけど、そんなこと気にならない


あのちまっとドジ子の彼がこんなに素敵だなんて
なんで−っ、と叫びたくなる











「ごめんなさーーい」

ドアが開いて彼らが現れた



「仲人役の典子とイザークです」

章が紹介する

「彼らもつい最近結婚したばかりで…」

くすっと笑うと

「離れるのが辛いだろうと、今夜は並んで座ってもらうことにしました
 まあ…新婚の二カップルのお披露目だとご解釈ください」




「ま…真由美」

「どうしたの」
真由美は友人に聞いた


「直球ど真ん中、きたーーーーっ」



外国の人、と聞いた時
金髪碧眼を思い浮かべたけれど


漆黒の髪と瞳の彼は

新郎に似たクールなすごみがある
それでいて優美さや、なんだかわからないけれど
壮絶な雰囲気も備えていて…


「ああ…もうだめ」

その場に崩れ落ちそうな風情の友人を
真由美は不思議そうに見た



食事も終わり
皆適当に席を離れ、歓談し始める


「千津美たちがすっかりお世話になって…」

千津美の姉が、ノリコたちの所にいった

「と、とんでもない
 あたしたち、彼らに来てもらえて本当に嬉しかったです」

「でもあなたたち、本当に大変だったのね…
 今は大丈夫なの」

あれは、功達に聞かれて創作した話だったが
つくっていきながら
ちょっとうっとりして調子にのってしまったかも
と思っていたので恥ずかしくなる


「あ… 大丈夫ですから…」

赤くなってノリコは言った




キンキンキーンと章がコップをフォークで叩いた

「式は挙げてないから、ここでいいんじゃない…
 誓いのキスとかさ…」



「お…いいなそれは」
豪法寺も笑いながら、コップを叩きだした



「えっ」
千津美は赤くなるし

功は兄を睨む



でも皆コップを叩き出し
キスするまでは終わらない



仕様がないので、トンと軽いキスをした


すると今度は章は

「イザーク」

「あんたたちも…」


呼びかけられてイザークが章を見た

章は、ノリコ…と言って、キスする仕草をする




「やだ、もう章さんたら…」
ノリコが赤くなるが


「こうか」


えっ、と思う間もなく
イザークがノリコを抱き寄せた



いつもの癖で
イザークは一度合わせた唇をなかなか離そうとしない



最初は囃し立てていた皆が

気恥ずかしくなって目をそらし始める


平気でいるのは
もうすっかり慣れてしまった
千津美と功くらいだった














いつも同じ展開ばかりで
ワンパターン化してます…反省
   
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