One More Story 1








寄るな、ノリコ

おれを  見るな

見るなっっっ



ああ違う!!
違うよ、イザーク


姿がどうでも
人でなくても

あたしにとってあなたが

あなたであることに変わりはないの…



だから、お願い帰ってきて

あの日の出会いからずっと

その気持ちに触れて

その想いに魅かれて

あたしは、こんなにも あなたのことが 好きになっている






夢をみた


荒野をさまよい

さしのべる手に応えてくれる人は、
いない…



でもそれは、夢だった



目が覚めると
その人は、あたしの傍にいてくれた


寝ている皆を起こさないように
あたしの耳元で
小さく話す彼の声

体温を感じるぐらいに近くよりそって



長い夢の果てにようやく握れたその手をもう二度と離したくなくて…


ご免ね、あの時見ちゃって

あたし本当にイザークのこと好きなんだってわかったの

ずっとそばにいてね


もう絶対
置いていてったりしないでね



甘えん坊になってしまったあたしは
それまで遠慮して言えなかった言葉を
伝えたんだ


ふわり、と顔に
彼の黒い髪がかかって…


「あ…」


彼の唇があたしのそれを捕える
何度も繰り返し…繰り返し…

熱い息を顔に感じ
目も開けられず
ただうっとりとあたしは
彼の想いを受け止めていた

幸せ過ぎて恐いくらい…
身体の痛みなど忘れてしまえる程の高揚感に包まれて
安心してしまって…

あ、あたしったら…すっと眠ってしまった。


口づけを繰り返しながら
切なげに ゆがむイザークの表情を
見る事もなく…







はぁーーっと、深いため息をついた。

怪我がだいぶ良くなったので
皆と訪れた草原

色とりどりの花々がそこかしこに群生していて
まるで絵のような色彩の
本当にきれいな場所…

イザークはあたしに見せてくれようと
思ったんだろうか
このすばらしくきれいなけしきを…


なのにあたしったら
どうしてこんなに落ち込んでいるの…

せっかくの彼の好意を
もっと喜ばないといけないと、
わかってはいるのだけれど…




あの口づけはなんだったのだろう?

あの時、あたしの想いが受け入れてもらえたのだと
勝手に思い込んで
安心して

ね、寝てしまったんだ…

ふーっと、またため息が出る


あれから
ああホントに
何も言ってくれない
今までと全く変わらない態度で
色々と親切に世話をやいてくれるけど
どこかつき離している

もちろん、あの後一度も…

あの夜の
唇の感触を思い出して
かぁーーっと赤くなり地面に伏せてしまった




そんなあたしをアゴルさんが心配してくれた。
ジーナったら、
この素敵なけしきをみることはできないけれど、わかるって…

偉いなあジーナは
見えないってことを、決して否定的には捉えていない
見習わないとあたしも…


どうしようもないことを悩んでじたばたするよりも
今できることをがんばろう
やっぱり前向きにいかなくちゃ

イザークを信じてついて行こうと思ったあの日から
少し我が儘になってるね、あたし
傍にいられるだけでも、嬉しいと思うのよ、ノリコ

一回でもキスしてもらえたんだから
それでよしとしなくちゃ…


やだ、バラゴさんったら花冠?
似合わなーいーーー
でもおかしい…

彼はいかつい顔に似合わず
結構人の気持ちを汲み取ってくれる
イザークとあたしがちょっとぎくしゃくしているのも
わかっているみたい

彼なりに笑わせて
なぐさめてくれているのかしら

でもイザークをからかうのは
困るな、ほんとに



こちらに向かって歩いてくるイザークの姿がみえる

ほんとに素敵な人
見かけだけじゃない
優しくて人の心の痛みがわかる人
あんな姿になってしまうことが理由なのか
心を閉ざして 生きてきた孤独な人

気持ちを受け入れてもらえなくても
傍にいたいと…

心から願った


きれいでいい匂いの花束は
薬草…?

うん、あなたが覚えろというのなら
覚えるよ、あたし
それが今あたしに出来る事なら
頑張る

だから…

だから、お願い
傍にいさせて、イザーク

ずっと…












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